農家さんの紹介:綿部農園(那珂川町)
里山の自然がゆたかな小砂の山間部で、化学合成された農薬・肥料は使わないで野菜を育ています。今は農家ですが、もともとは調理師でした。帰農志塾で3年8ヶ月間研修し、2010年に就農しました。
2018年現在、栽培に使用する肥料は自家製のボカシです。もみがら、米ぬか、くず大豆、鶏糞、燻炭などに水をかけて、混ぜあわせ山積みにして発酵させます。温度が60度くらいまで上がったものを切り返しながら、ひと月かけて熟成させて仕上げています。
畑から抜いてきたばかりの野菜をそのまま料理すると元気な味がする。生を食して精となす。冷蔵庫の野菜では料理をつくらない調理師もいるくらいで、なるべく新鮮な野菜を手に入れて、それをすぐに使えば、鮮度は食べた人に伝わる。その時季にしか食べられないものを使えば、季節が食卓の上に乗って楽しい。こごえるような寒さの日には芯から温まるものを、蒸し暑い日には自然と汗がひくものを。元気なときは意外とわからないものだが、くたびれたとき、落ち込んだときなど、しっかりした料理は心にしみる。
人生、うまくいくことばかりではない。だからこそ、日々の食卓を大切にしたい。食卓はこころとからだをいたわる場である。手づくりのおいしい料理は、苦悩や苦しみを癒す。そういう不思議な力がある。ちょうどよい言葉が見つからないが、ここでは、その力のことを、愛情と呼びたい。
食をいとおしみ、大切に思う気持ちに寄り添い、食卓の充実に力添えする。収穫した野菜を届け、植物の力を伝える。そのつながりのなかで躍動し、力をつけていきたい。